私の子どもの頃の話をします。我が家は鳶職の家系でした。祖父も父親も鳶職人で、それどころか、親戚のおじさんもみんな鳶職。そんな中で育ったからか、憧れはいつも鳶職人でした。私の中では、プロ野球選手と鳶職人が2大スターだったくらいです。
あれから長い年月が過ぎ、私も当然のように鳶職人になりました。そして、26歳のときに自らの鳶会社を立ち上げたのです。この仕事が大好きで、鳶職人って本当にかっこいい職業なんだという想いは、子どもの頃から鳶会社の経営者になった現在に至るまで、みじんも変わっていません。
ただひとつ、残念に思っていることがあります。それは、鳶職人とは、どうやら私が思うほど世の中から評価されていないらしい……ということです。
「鳶職」と聞くと、職業としてネガティブなイメージを想起する人が非常に多いです。そして、まるでそれに呼応するかのように、お給料や待遇など、社会で暮らしていくために必要ないろんな制度が、いわゆる世間一般の会社員に比べると保証されていないのではないか……という肌感覚があります。
私は、その現状を変えたいと強く思うのです。鳶の家系に育った人間として、鳶という職を受け継ぎ、次代へ引き渡す責務を負った一人として、鳶職の評価を正当な場所へと引き上げたいのです。
はっきりと言います。そのためには、私たちも旧来の「職人」の殻に閉じこもっていては駄目だと思っています。自らの立ち居振る舞い、仕事へ取り組む姿勢、職人としての技能を研ぎ澄ますますことはもちろん、建設業界の仕組みや、会社の収益構造といったビジネスへの深い理解も必要です。いわば、社会に暮らす一人のビジネスパーソンとして、人間力を向上させていく努力が欠かせないと思っています。
もちろん、会社も変わる必要があります。職人の人間力をあげるために、さまざまな研修に取り組みます。福利厚生にも力を入れ、職人に選ばれる会社になることが、私が第一に果たす使命だと思っています。最近では、男性職人にも育休を取らせてはどうか……なんて考えています。もしかして同業他社に居た方からすると、「変わった会社だなぁ」と思うかもしれません。
もっと変わったことを言います。私たちが目指すのは日本一の鳶会社です。売上でもなく、会社規模でもなく、誰もが「日本一の鳶会社は日比建設だ」と声を揃えて言うような存在を目指しています。その上で、業界のど真ん中から「これからの鳶職とはこういうものだ!」と、声を大にして発信したいのです。
隅っこから声をあげるだけでは、きっと何も変わらない。だからこそ日本一の鳶会社を目指します。鳶職の未来に向けて旗を立てる、そんな夢に共感してくれる方なら、私たちは両手をあげてあなたを歓迎します。