『足場屋さんて、学歴不問で若くても稼げるイメージあるけどきつそうだよね』
あなたもそんな風に思ったり、あるいはそんな話を人伝に聞いたことがあるかもしれません。
足場屋さんがきついと言われる理由の大きな1つに体力面についてというのがありますが、足場屋経験もある現役鳶工事会社社長である僕の経験からいうと、きつい理由はそれだけでは無いように思います。
この記事では足場屋さんがきついと思われる理由につい手を自身の経験から、また鳶工事会社社長という立場から足場屋さんとは別の選択肢の提示ができればと考えています。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
目次
1.現役鳶工事会社社長(足場屋経験あり)が考察する足場屋がきつい理由5選
まずはじめに、足場屋さんが『きつい仕事』と思われる理由について、独立当初の20代後半の一時期、足場屋さんの仕事を請け負っていた経験をもとに書いていきます。
1.1 とにかく体力的にハードだから
足場屋さんの仕事はとにかくハードです。
足場の組み立ては重力に逆らって、重たい鋼製の足場材を組み上げていくのが主な作業内容なので、主に筋トレ的なキツさがあります。
最上段で足場を組み上げていく人、中段で材料を中継する人、下で材料を準備して渡していく人、どのポジションでも筋トレ的要素は同様にあります。
組み立て作業の場合は、図面を見ながら高さを揃えたり、建物との距離を測ったりしながら作業をするため、ずっと動き続けるということが少ないのは救いです。
足場の解体作業になると組み立てより単純な作業(ただただ解体していく)なので、筋トレ的な要素にプラスして有酸素運動的なキツさが加わります。
足場の組立解体作業全体を10とした場合(現場の状況などによって多少の違いはありますが)作業にかかる手間(人数や時間)は組み立て7、解体3くらいの割合になるのが一般的です。
解体はそれくらいスピーディーに、ある意味勢いで行うような作業なので、体力的にはさらに厳しいものがあります。
以上のような理由から、足場屋さんは若いうちしかできないなどと言われることも多く、僕自身も当時足場屋さんをやりながら『これをずっと続けるのはきついな』と思ったことを覚えています。
1.2 毎日が足場工事(単調な仕事)だから
これも当たり前のことではありますが、足場屋さんは毎日足場を組み立てたり解体したりするのが仕事です。
足場の仕事は図面を見て下回り(1段目)を組み立てるところは、経験やセンスによって多少差がつく部分はありますが、2段目以降は比較的単調な作業の繰り返しになるので、僕のように飽き性の人間には正直向いていないと思います。
単純作業すぎてあまり成長実感が感じられず、きついなと思ってしまう部分でした。
これは逆にいうと、少ない経験期間でもある程度戦力になるとも言える部分なので、足場屋さんが若くして稼げる大きな理由の1つです。
足場屋さんは2〜3年の経験があればよほど特殊なケースを除いて、10年経験のあるベテランと遜色なく、なんなら体力がある分だけ2〜3年の方が有利な部分もあると思います。
これをメリットと考えるか、デメリットと考えるかは人によって違うでしょうが、僕はやはり単調で体力勝負の要素が強い部分はデメリットできついなぁと感じていました。
1.3 拘束時間が長いから
これは足場屋さんの形態(工事が新築戸建てなのか大規模マンションの改修工事(塗装塗り替えなど)なのかなど)によっても違いがある部分ですが、例えば新築戸建ての足場屋さんの場合でいうと、材料を自社で所有しているケースが多いので、朝は早い時間から材料置き場に行ってトラックに足場材の積み込みに行き、現場で足場の組み立て(掛け持ちもあります)を行うなど、実際に現場で足場の組み立て解体をしている以外に、資材置き場までの移動時間や積み込み時間、現場までの移動時間など拘束時間はどうしても長くなる傾向にあります。
また足場工事は工程がタイトかつピンポイント(他の職種との絡みで)なので、場合によっては残業が続くことも多いです。
足場の組立解体作業の時間は1日8時間でも、それ以外の作業で時間を取られることも多く、拘束時間が長いのもきついと言われる理由となります。
1.4 仕事が形に残らないから
足場というのはあくまで工事を進めるために構築する仮設構造物のため、工事が終われば跡形もなくなります(当たり前ですが)
これは気にならない人にとっては全くきつい理由にはならないのでしょうが、僕たちのような鳶職は誰もが知っている大きなビル(例えば○○ヒルズとか)の鉄骨(建物の骨組み)を立てたりするので、自分たちの仕事が形として残る(完成すると鉄骨自体は見えませんが)何もないところから巨大な建物を作るという実感がハンパないので、その達成感が感じられない足場屋さんは少し物足りなさを感じてしまいます。
ちなみに、僕たち鳶職人も日常的に足場の組み立て解体は行うので、綺麗にかけられた足場の機能美的な美しさはよく理解しています!
それでも最終的に残らない点が少し寂しく、キツイと感じる点です。
1.5 将来性に不安があるから
- 1.1でかいた体力的なキツさ
- 1.2で書いた経験値が活かしづらいという点
などの理由から、やはり足場屋さんは若いうちにやるのが向いているのかなぁというのが僕の結論です。
もちろん、管理職的なポジションにつければ年齢に関係なく続けられるのでしょうが、現実的にはそのようなポジションにつける人は少数です。
こと足場工事は『体力よりも経験値が活かせる』という作業領域が少ないので、将来性を考えるときつい部分はあります。
2.きついけど足場屋をやるのは若いうちに稼げるから?
では、きつい点も多い足場屋さんをやる人が多いのはなぜか?
- 比較的短期間で仕事を覚えることができる
- 足場職人は常に人手不足
- 出来高制(請負形態)でやりやすい
以上のような理由から若いうちから稼げるというのが一番大きな理由として考えられると思います。
僕も20代後半、独立したてで今のように鳶工事がたくさん受注できない頃に2〜3年間だけ足場屋さんの仕事(主にビルやマンションの改修工事ようの足場)を会社として受注してやっていました。
会社の売り上げを上げるためには仕事を選んでいる場合ではなかったですから、、、
ただ、本職の鳶工事の仕事が安定して受注できるようになってからは足場屋さん的な仕事はやらなくなりました。
確かに先述した通りきつい点も多い仕事ですが、足場屋さんの仕事自体は家を新築していく上でも、建物を改修していくためにも世の中に無くてはならない仕事で、とても尊い仕事だと思っています。
若くして稼げる、また社会にとって不可欠な仕事として誇りを持って働いている足場職人さんには敬意を表したいと思います。
3.足場屋のきつい理由を回避して同様に若いうちから稼げるTHE鳶職の仕事とは?
ここであらためて、足場屋さんと鳶職の違いについて軽く触れておきます。
足場屋さんも広くいうと鳶職の中の1形態です。
鳶職は
- 足場鳶(足場屋さん)
- 鉄骨鳶
- 重量鳶
などに分類されますが、それらのように分類された呼び名が無い『THE鳶職』とでも呼ぶべき本流の鳶職があり、それが僕たち日比建設などに所属する鳶職人のような働き方です。
先ほども書いた誰もが知っている有名なビルや大型倉庫、ショッピングモール、タワーマンション、などを新築するときに
- 現場を区画する仮設の囲い(仮囲いといいます)の設置
- 他職種の方達が安全に作業ができるように設備(仮設の通路や端部の手摺りやネットなど)を整備
- (もちろん)工事に必要な足場の組立解体
- 建物の骨組みである鉄骨の組み立て(鉄骨造の建物の場合)
- 工事に使うタワークレーンや工事用エレベーターの組立解体
- その他、他の専門職種(大工さんとか塗装屋さんとか)の方達の領域外の全ての仕事
などの鳶工事を総合的に行います。
なので、現場着工から竣工まで現場の主役(中心的存在)として工事に携わるのが僕たちのような鳶職人です。
足場だけを行う足場屋さん(ちなみに僕たちのような鳶職人は足場屋さんが『鳶職』を名乗ると少しイラっとするという『あるある』があります笑)との違い、少しご理解いただけたでしょうか?
ここまで書いてきた通り、足場屋さんは社会的にも重要な仕事かつ、若いうちから活躍(稼げる)できる魅力的な仕事ですが、同様に若いうちから稼げ、1章で書いた足場屋さんがきついと思われる理由に該当しないことも多いのが僕たち日比建設のような鳶工事会社で鳶職人になるという選択肢です。
僕たち鳶職人の場合
- 体力よりも経験値が活かせる仕事がある(例:鉄骨建て方の下回り(指揮作業)など)
- 作業領域が多岐にわたる(足場、鉄骨、機械関係、共通仮設関係など)ため単調ではない(故に熟練までには長い期間を要します)
- 仕事によって早出や残業はもちろんあるが、早朝に資材の積み込みなどはないので拘束時間は短め
- 形に残る、地図に残る。家族や知人に『あの建物うちでやったんだよ!』と前を通るたびに言うのは鳶職あるある笑
- 若い職人、経験の浅い職人と協力・分業することで、体力をあまり使わなくても知識経験を活かして働くことが可能(故に50代、60代でも活躍している鳶職人は多い)また職長(現場責任者)になれば仕事内容は管理業務が主となるため年齢に関係なくできる
など、足場屋さんでつらいと思われている理由が大きなデメリットになりにくい職種かつ、現場の主役として他の職種の人たちからも一目置かれるのがとび職です。
とはいえ言うまでもありませんが、鳶職もめちゃくちゃ大変な仕事で、別の意味でつらいと思われる点はありますので誤解なきように。
ただ、僕自身のこれまでの経緯(足場屋と鳶工事の両方)をご覧いただいてわかる通り、足場屋さんは早々に辞めて鳶工事会社は30年近くやっておりますので、僕やうちの会社(日比建設)的には
という図式が成り立っています。
まとめ
当たり前ですが、どんな仕事にもキツさ(大変な部分)は必ずあると思います。
そのキツさ込みでその仕事を好きになれるか、キツさを超えるやりがいを感じられるかは人それぞれであり、今足場屋さんとして活躍している職人さんたちは『きつさを超える何か』があるからこそ頑張っていらっしゃるのだと思います。
いたずらにキツさを避けまくっていては、仕事のやりがいにたどり着けないと僕は思います。
あなたがこの記事を読んで足場屋さんや鳶職人の世界に少しでも興味を持ってもらえたらありがたいです。
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