鳶職の事故率は低い!根拠となるデータと徹底した安全対策を紹介

鳶職の事故はテレビで報道されることも多く、被害規模も大きいため「鳶職は事故が多くて危険な職業なんだな・・・」と感じていませんか?
しかし実際は、他の職業に比べて、事故率が高いということはなく、むしろ鳶職の事故は世間一般のイメージからすれば比較的少ないと言えます。
事故が多いと思われている鳶職の事故が少ないのは、安全管理が徹底されているためです。より安全な環境で作業ができるようにするための法改正や、道具・設備の安全性の向上もあり、事故はさらに減ってきています。この記事では、鳶職の事故がなぜ少ないのか、また事故を防ぐにはどんなことに気をつければいいのかをまとめました。

1 鳶職の事故率はそこまで高くない!

厚労省のデータ(度数率)から鳶職の事故率についてみていきましょう。
度数率とは?100万延べ実労働時間当たりの労働災害による死傷者数で、災害発生の頻度を表す数値のことです。数値が高いほど事故の発生頻度が高く、数値が低いほど事故の発生頻度が低いということになります。
厚労省の公開いている「労働災害動向調査データ」には業種ごとの度数率が掲載されています。そこからも分かるように、他の業種と比較しても鳶職(データは建築業全体で算出)の事故率は決して高いとは言えないのです。むしろ、事故率という意味では他の業種の方が高いことが分かります。

厚生労働省:労働災害動向調査データ
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/44-23_katsuyourei.pdf

2 危険と思われているのに事故が少ないのは安全対策がしっかりされているから

鳶職は高所での危険な作業なので安全対策が徹底されています。建設現場では高所作業等、墜落の危険がある箇所にはスタンション(仮設的な墜落防護工)を取り付けますが、過去と比べると数倍取り付けていますし、第三者から見れば「そこまでやらなくてもいいのでは?」と思ってしまうくらい過剰なほどです。極端にいえば、万が一子供が入ってしまっても大丈夫なレベルです。それでも他の業種に比べ、テレビのニュースなどで建設現場の事故が報道されるケースが多いこともあり、「鳶職=事故が多くて危険」というイメージが強くなっているのかもしれません。しかし近年では技術の進歩や道具の安全性の向上、安全対策についてもさらに徹底されるようになったこともあり、事故は少なくなりました。

2-1 命綱は絶対に使う(型が変わっている)

→安全帯から墜落制止用器具へ改称に伴いフルハーネス型を原則化

鳶職は現場で作業をする際、安全帯の装着が義務付けられています。2019年2月1日に安全帯の規格が改正され、「安全帯」という名称も「転落制止用器具」に改称されました。そしてこの改正により新規格に適合しない墜落よう制止器具は2022年1月2日以降、メーカー・代理店等も販売することができなくなり、高さ6.75m超の高所(建設業では5m超)での作業時は「フルハーネス型」の墜落制止用器具の使用を原則化することになりました。ではフルハーネス型を使用することでどんな違いがあるのでしょうか。それは万が一落下した時の安全性や体への負担のかかり方です。胴ベルト型の場合は落下時に腰や腹部、内臓への負担が大きくなります。またぶら下がった状態になった時にすり抜けて落下してしまう場合もあります。一方フルハーネス型は複数のベルトで固定されているため落下時の衝撃を分散することができ、体への負担を大幅に軽減することができます。

2-2 現場のルールもとても厳しい

建設現場で作業をする際のルールもとても厳しく設定されています。
建設中の建物の周りには、人や工具の落下を防ぐ安全ネットを設置することや、クレーンで重い荷物を持ち上げる時には荷物の下に入ることを禁止するなど様々なルールがあります。
もっと細かいことで言えば、

  • ポケットに手を入れて歩かない
  • 階段を駆け上がったり駆け降りたりしない
  • 不用意に資材の上に上がらない

など、当たり前のことに思えますが、こういった細かいルールをしっかり守ることが事故防止につながるのです。

2-3 最新の足場は安全性が圧倒的に高い→今では次世代足場が主流!

近年では安全性が高く作業もしやすくなった次世代足場が主流になっています。手すりを先行して取り付ける(手すり先行工法)ので、足場の組み立てをする際常に手すりがある状態で作業でき、隙間なく床を作ることもできるので、墜落事故を防止することができます。解体時も手すりを残しながらの作業ができるため従来の足場よりも安全性が高いです。またもう一つの特徴として「階高が高い」という点もあります。従来の足場の階高は1700㎜なのに比べ、次世代足場は1800〜1900㎜あります。高身長の人が1700㎜の空間で作業をするのはとても窮屈で、腰を曲げながら作業をしなければいけないこともありましたが、次世代足場であれば足場内が広くなるため作業しやすくなります。作業がしやすいということも事故を防止する上ではとても重要です。

3 それでも稀に起こる鳶職の事故3選→原因はヒューマンエラーがほとんど!

どんなに注意しても事故は稀に起こってしまいます。その原因のほとんどはヒューマンエラーが原因です。
では、どんな事故が多く発生しているのか、特に多い3つの事故についてみていきましょう。

3-1安全帯を装着しなかったために起きる転落事故

鳶職の事故で最も多いのは言うまでもなく「足場からの転落」です。しかし、転落事故は「明らかに危険な現場」ではほぼ起こりません。危険度が低く思われる現場の方が事故が起きるのです。超高層ビルの建設現場で、地上100mを超える現場であれば、ただでさえ気が張っていますし、安全対策への意識も高くなるのが当然です。一方、危険度が低く思われる現場では、気の緩みや不十分な安全対策、また経験や慣れから準備を怠り事故が発生するケースが多いのです。つまり、ほとんどの場合は「油断」が原因のため、本来転落事故は100%防ぐことができる災害なのです。どんな現場にも危険が潜んでいるということを忘れずに常に注意を払いましょう。

3-2運転ミスやきちんと玉掛けができていなかったために起きるクレーン事故

資材の運搬・受け渡し時の「クレーン等の建設機械の事故」にも注意が必要です。ほとんどの場合が「運転ミス」や「不注意」がほとんのですが、玉掛けがしっかりできておらず、資材が落下して起きる事故もあります鳶職人としてクレーンの事故を防ぐのに最も重要なスキルがこの「玉掛け」です。超高層のビルともなれば柱1本の重さが10トンを超えることも。資材の重さ・資材の重心を正確に把握し玉掛けをしないと、吊り上げた時に資材がずり落ちる危険があります。そんなことが起こってしまったら間違いなく大事故です。クレーンに関わる作業をする際は緊張感を持って行いましょう。

3-3汗で濡れた手を通じて起きる感電事故

鳶職の事故としてあまり知られていませんが、感電事故もあります。汗で濡れた状態で電源に触れて感電するケースや、落雷時に濡れた足場を通じて感電するといったケースもあります。このような事故は注意さえしていれば十分防ぐことができる事故です。「まさか感電なんて・・・」と思わずに気をつけましょう。

4 事故の確率を最小限に抑えるためにできること

事故の確率を最小限に抑えるには「自分自身のメンテナンス」が最も重要です。体調がよくなかったり、寝不足で集中力が切れてしまうような状態ではいい仕事ができないばかりか、事故の確率も上がってしまいます。
鳶職は特に、高所での危険な作業を行うため、心身のメンテナンスはとても大切です。

4-1体調管理

事故を起こさないために最も重要なのは「体調管理」です。これは体はもちろん心も関係してきます。
寝不足だったり、二日酔いだったり、風邪気味だったり・・・こんな状態では事故のリスクは上がってしまいます。生活習慣を整え、病気にもかかりにくい体力作りが大切です。精神的な面でも過度なストレスがかかった状態ではよくありません。日々色々なことが起こる中で、簡単なことではないかもしれませんが心身ともに万全な状態を保てるようにしましょう。

4-2油断しない

仕事に慣れて、経験値も上ってくると、どうしても油断してしまうのが人間です。しかし、この油断が事故につながるのです。どんな現場であっても、安全に作業することを第一に考え、行動しましょう。

4-3イレギュラーなことが起きたら一旦「作業を止める」

→一旦立ち止まって計画し直す
事故が起こる場面で最も多いのは「イレギュラーなことが起こった時」です。何かいつもとは違うな・・・と違和感を持ったまま作業を続けた結果、事故を起こしてしまうというケースが多いのです。そのような時は、まず誰かに相談したり、工程を改めて確認するなどして、一旦立ち止まるようにしましょう。

4-4改めてヒューマンエラー防止の方策を抑えておく

事故の原因のほとんどはヒューマンエラーです。「クレーンの不具合が起きて資材が落下した」「足場の品質が悪く落下した」といった事故はほぼ起きません。そのため、ヒューマンエラーを起こさないことが1番なのですが、完全に防止することは難しいものです。起きないように対策を考える、また、起きてしまった場合に備えておくことが重要です。厚労省の職場のあんぜんサイトにはこのような方策が記載されていますので、改めて確認しておきましょう。

厚生労働省:職場の安全サイトhttps://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo62_1.html

5 事故に備えて鳶職人が入っておくべき保険

万が一事故が起こってしまった場合に備えての自助努力も必要です。鳶職が備えておくべき保険についてご紹介します。

5-1就労不能保険

事故で働けなくなってしまった場合の備えるには「就労不能保険(収入保障保険)」に加入しましょう。近年では、事故によって死亡する人は減少傾向にあります。これは医療の進歩によって助かる命が増えているということなのですが一方で障害や後遺症が残り、仕事復帰ができずに障害年金を受給する人は増加しています。もちろん国の補償だけでは、今まで通りの生活を送ることはできません。そのため、不足分は保険で賄う必要があります。今の生活費を参考に必要な金額の保険を準備しましょう。

5-2死亡保険

考えたくはありませんが、万が一の場合にも備えておきましょう。
死亡保険金についても、備える金額は人それぞれ違います。世帯状況に合わせて準備しましょう。

5-3鳶職は危険職種のため保険加入に制限がある場合がある

生命保険会社によっては、危険職種に従事している人の保険加入に制限をかけている場合があります。
危険職種と判断される職業は消防士や警察官、スタントマンなども該当しますが、鳶職も含まれています。
一般的には、制限がかかるのは「死亡保険金額」と「入院保険の日額」です。保険会社によって限度額も違いますので、詳しくは各保険会社への問い合わせるといいでしょう。

まとめ

いかがでしたか?鳶職は決して事故が多い職業ではなく、安全に作業するための工夫や配慮・対策がしっかりされていること、また自分自身が事故を防ぐためにできることや気をつけるべきことが分かったでしょうか?

ほとんどの事故が、気をつけさえすれば防げる事故です。事故を起こさないように、常に安全第一を最優先に考え行動することで、さらに事故を減らしていくことができるはずです。今の建設現場は過剰だと思われるくらいに安全対策がされていますので、ルールを守って、事故のない建設現場を目指しましょう。

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