ダメでもいいから、やってみよう。
不登校の15歳が一流のとび職人になるまで
目 次
エイチエフユナイテッド株式会社では中卒で入社した社員も多くいます。
今回は2013年に中卒入社した先輩社員・Yさんのインタビューをお届けします。
入社7年めを迎え、若手のなかでも実力NO.1といわれるほどの成長をとげたYさんに、
入社の経緯から現在の仕事について聞きました。
1.不登校でずっと家にいたけれど、
いつかは自立しなきゃと思ってました
「中1の終わりから、ずっと不登校だったんです」
Y氏は浅黒く焼けた、細身ながら筋肉質な体格の若手とび職人。
現在の快活な雰囲気からは予想もつかない入社の経緯を話してくれた。
「友達と喧嘩して、それから不登校になって。
毎日家でテレビ見て、パソコンで遊んですごしていました。
高校には行かないって決めていて。
どうしようかな、って考えていましたけど、
いつかは自立しないといけないじゃないですか」
ダメでもいいから、なんでもいいから、働いてみよう。
そう思ったY氏は、父と一緒にハローワークに行ってみた。
「中卒で募集している仕事は結構ありました。
でも住込みが条件のところが多くて。
中卒でいきなり住込みって、ちょっと寂しいかなって(笑)」
そこで目についたのがエイチエフユナイテッド株式会社の求人。
実家から通えて、しっかりした研修もあるらしい。
とび職人とは何をするのかまったくわからなかったが、
ひとまずやってみようと入社した。
Y氏を面接した、社長の日比靖仁は苦笑いしつつ当時を振り返る。
「青白い顔をして、体もひょろひょろだし。
大丈夫かな?って心配しましたよね。
とび職人なんて、できるのかな?って。
あの時は、山内がここまで成長して
若手のなかでも一番のとび職人になるなんて
思いもしなかったからなぁ!」
2.肉体的には疲れるけど
気持ちがツラくなることはなかった
2年近く不登校で引きこもった生活から、
とび職人見習いとして過酷な日々がスタートし、
さぞツラかっただろうと思いきや、
Y氏は「確かに肉体的には疲れるんですけど、気持ちはツラくならなくて……」と言い首をかしげる。
「実家だったので、親が毎朝起こしてくれたのは正直ありがたかったです(笑)。
先輩達も見た目は怖そうでも、実際はやさしかったですね。
配属された現場が比較的ゆとりがあるところだったので、丁寧に教えてもらえました」
最初の1年間は、教わったことをひとつひとつやってみる。
少しずつやれることが増えていくことが、嬉しかった。
「現場は屋外なので、暑いし、寒いし、雨も降るしツライことはツライんです。
でも根が負けず嫌いなんで、仕事は続けてやるって思っていましたね。
意地というか。あと、同期入社の仲間で励まし合えたのも大きかった」
2年目になると、少しずつ仕事を任されるようになる。
一人で色々なことができるようになり、任せてもらえる責任感と嬉しさで
仕事はますます楽しくなった……が、
ここでY氏は大きな転機を迎えることになった。
3.体力的に一番でなくても
考える力があれば
とび職人の一番になれる
「ある時、先輩にめちゃくちゃ怒られたんです。
それまで仕事は、先輩に言われたことをやるだけでした。
1年目まではそれで良かったのかもしれない。
だけど、2年目になって先輩から
『全体の流れを見て、仕事のダンドリを把握しろ、
わからないならわかるようにしろ!』ってすごい勢いで怒られて」
怒られたのが良かった、とY氏はきっぱりと言う。
「全体の流れをみて、ダンドリを把握し、仕事の効率を考える」ことこそ、
Y氏がとび職人として飛躍した大きなポイントだったのだ。
「仕事の技術じゃなくて、意欲を教えもらいました。
先を読んで仕事を率先して進められるようになることで、
ガラッと仕事のやり方が変わりましたね」
効率よく動けるようになると、先輩に褒められ、新しい技術を教わる。
新しい技術をモノにすると、現場で更にスムーズに仕事を進められ、
また違う技術を教えてもらう。
その繰り返しで、瞬く間に職人として腕を上げていった。
「僕は考えることが好きで、いろいろシュミレーションして
仕事の順序を効率よく組み立てるのが得意なんです。
体力的に一番でなくても、考える力を鍛えれば、
とび職人の一番を目指せるんだな、と思いました」
4.今になって思うんですけど
とび職人は、どんな人でも向いています
現在、とび職人として6年目を迎えるY氏は、とび職人の魅力をこう語る。
「15歳くらいだと、とび職人って言われてもどんな仕事をする人か、ピンと来ないですよね。
まずビルを建てるには、大工さんとか、左官屋さんとか、
たくさんの職人達が関わっています。
とび職人は、その職人集団の中で最も大事で中心的な役割を担っています。
まとめ役というか。現場でなにかイレギュラーなことが起きた時に、
解決するのはとび職人なんです。だから、とび以外の仕事についてもすべて理解しておく必要がある。
あらゆることが守備範囲だからゴールがないし、
いくらでも成長できる仕事っていうところが魅力ですね」
ランドマークになるようなタワーの建設に携われることは、
全ての職人にとって生涯自慢にできること。
その中でも「あのビル、俺が建てたんだぜ」と真っ先に、
誇り高く言い切れるのはやはりとび職人なのだ。
「とび職人のなかでも超高層ビルの現場に入れるのは
ごく一部の職人だけだからエイチエフユナイテッドに入って
ラッキーだったなぁと思います(※)」
入社時は、同期のなかでも一番体力がなく、背も低かった山内。
両親からは「たぶんすぐ辞めるだろう」と思われていたし、
自分もダメでもいいからひとまずやってみよう、と始めた仕事だった。
今、山内は「体力とか、体格とか、全然関係なかったです」と言い切る。
「とび職人は、体力だけが全てじゃないんです。
まあ、体力はあるにこしたことはないけど、
自分で仕事を組み立てられる方が大事。
でも、今になって思うんですけど、とび職人はどんな人でも向いています。
得意なことがなにもなくても、やる気があるだけで全然オッケーだと思います。
やる気があれば先輩に可愛がられますし。
憧れだけでもいいと思います。
こうなりたい、って姿があれば必ず頑張れる。
やってみなきゃわからないので、
恐れずやってみて欲しいです。
自分は、とび職人になれてよかったと思ってます」
(※)200mを超す超高層ビルは、日本でも数えるほど。その大きな現場を任せてもらえるとび職人の会社も、限られた存在。エイチエフユナイテッド株式会社は、日本有数の大手建設会社のパートナーとして超高層ビルの現場を数多く請け負っている。