『女性でも鳶職人になることは可能なのか?』
『女性で鳶職をやっている人はいるのか?』
そんな疑問をお持ちではありませんか?
建設業界における職人は一般的に『男の仕事』というイメージが強く、とりわけその中でも『鳶職人』は男の中の男の仕事というイメージが強く持たれています。
そんな鳶職人の世界にも、ごくごく少数ではありますが活躍をしている女性がいます。
弊社には過去5名の女性が入社し、現在も女性鳶職人が在籍しています。
鳶職人に興味を持ったものの、情報の少なさからその世界に飛び込むことを躊躇している女性もいらっしゃる様です。
そこで、この記事では『現役の女性鳶職人』と『女性鳶職人と日々一緒に仕事をしている男性鳶職人』の両方にインタビューをして両者の目線から女性鳶職人について深く考察していきます。
目次
1.【現役女性鳶職人にインタビュー】鳶職やってみてどうですか?
まずは日比建設に入社して1年3ヶ月になる現役女性鳶職人Yさんにインタビューをしてみました。
女性鳶職人として日々現場で働いているYさんのリアルな声をお聞きください。
1.1 簡単に自己紹介をお願いします
1995年生まれの27歳で、3歳年上の姉と2人姉妹で育ちました。
祖母が美容師をやっていて、小さな頃からその姿を見ていた影響なのか高校卒業後は専門学校に通い美容師になりました。
身長が170センチあるのが自慢です!
1.2 前職と転職の動機を教えてください
美容師の仕事を6年ほどしてきました。
とてもやりがいのある仕事だけど、もっと自由に働きたいと思い心機一転、雇用される社員の立場からフリーランスの美容師になることを決めました。
ただ、フリーランスの立場だけでは様々不安もあったので、大好きな美容師は特定のお客様だけを相手にフリーランスとして週末にだけ行い、平日は正社員でどこかで働こうと決めました。
なので現在は平日は鳶職人、週末は美容師というかなり異色な二刀流で頑張っています(笑)
1.3 なぜ鳶職人を選んだのですか?
身内や友達関係に鳶職人がいた訳ではなかったのですが、なぜか昔から職人、特に鳶職人さんをかっこいいと思っていました。
美容師もそうなのですが、コツコツ技術を身につけていく職人という働き方が好きなのだと思います。
20代後半になり体力の衰えや身体の変化も気になっていたので、働きながら体も鍛えられるのも良いと思いましたし、仕事のできる出来ないが目に見えて分かり、人間関係もサバサバとしている環境で働きたいとも思っていたので鳶職人になることを決めました。
1.4 やる前と今とで印象が変わったことはありますか?
『鳶職=足場』という固定観念があったのですが、足場以外にも鳶職人が行う仕事はたくさんの種類の仕事がある事を知りました。
また足場も決められた図面があって、その通りに組むだけで誰が組んでも同じ手順・同じ形になると思っていましたが、10人いれば10通りの組み方があり、組み立て方や完成した足場は人によって全然違うということにも驚きました。
鳶=体力仕事と思っていましたが、頭を使うことばかりで、正直こんなに難しい仕事だとは思っていませんでした。
女性としての体力的なマイナス面は根性でなんとかしようと思っていましたが、頭を使うことは根性だけではどうにもならず日々悪戦苦闘しています(笑)
1.5 仕事をする上で大変なことはなんですか?
繰り返しになりますが、頭を使うことが一番大変です。
小さなミスが大きな事故につながる怖さは常にあるので、緊張感を保つこと、体調管理も何気に大変です。
あとは私がちょっと鈍臭いので、あざやキズなどの地味な怪我が意外と多いです(笑)
一人前の鳶職人になるためには視野の広さ、危機管理能力、コミュニケーション能力など求められる能力が高くて多いのも大変で、1年ちょっとやっていますがまだまだわからない事、出来ない事だらけです。
1.6 鳶職人のやりがいはなんですか?
例えば足場で言うと、いろいろな材料が複雑に組み合わさって完成すること、その機能美に感動します!
また私たち鳶職人が架けた足場が、他の職人さん達のためになっているのが目に見えて分かるのもやりがいになります。
あとは何と言ってもいい汗流せること!日々仕事をしている実感が半端ないです。
建設現場ではいろんな業種の人と関われるので人脈や世界も広がりました。
1.7 女性で鳶職を目指す人へ一言お願いします
まだまだ圧倒的に男性が多い職場環境ですが、他職種やゼネコンの監督さんなどにも女性は居ますし、外国人の方も多く、ある意味とてもダイバーシティな職場環境です。
職人の世界は私が求めていたサバサバとした心地よい人間関係なので、前職時と比較して対人問題でのストレスは大きく減りました。
もし鳶職人になることを少しでも迷っている女性がいたら、ぜひ躊躇せず飛び込んでみて欲しいです。
日比建設へ入社してくれたら私が直接指導しますよ(笑)
2.【男性鳶職人へインタビュー】男目線で考える女性鳶職人とは?
次に、女性鳶職人と一緒に仕事をすることが多い男性鳶職人(職長)にもインタビューをしてみました。
2.1 女性鳶職人と一緒に仕事をする上で気をつけていることはありますか?
まずは現場の環境面を確認するようにしています。
女性用のトイレや更衣室なども現場立ち上げ当初は整備されていないことがあるので、限られた条件の中で快適に作業ができるように気を配っています。
また言葉遣いなども、言い方が強くなりすぎたりしないよう可能な限り気をつけるようにしています。
2.2 現場に女性がいることで良い点はありますか?
仕事の面においては男性と同じように働く女性ばかりなので、性別による差はそんなに無いと思います。
鳶職に挑戦しようという、ある意味やる気も意識も高い女性ばかりなので普通に戦力として活躍してくれます。
今まで日比建設に在籍していた女性鳶職人は明るくコミュニケーション能力が高い人が多かったので、他職の職人さんたちも含め、コミュニケーションが活性化されている印象はあります。
会社の集まり(社員旅行や研修や食事会など)などでも女性がいるだけで、男性だけしか居なかった時代とは雰囲気が少し変わたっと思います(もちろん良い意味で)
2.3 女性と仕事をする上で大変なことはありますか?
やはり体力面では男性の方が優位なことが多いこと、また体調面なども男性以上に考慮してあげなければいけないので適材適所に配置することを心がけています。
あと、強いて言えば男性社員以上にコミュニケーションを取る頻度を多くするよう意識しています。
それ以外は特に大変なことはありません。
2.4 女性で鳶職を目指す人へ一言お願いします
向き、不向きの差は多い職種だと思いますが、女性だから絶対に無理ということはありません。
現に今まで数名の女性鳶職人と一緒に仕事をしてきましたが、真面目にコツコツと仕事に取り組む姿勢などは男性以上で、仕事を覚えていけば男性と同じように長く活躍できる仕事だと思います。
少しでも関心のある女性がいれば、ぜひ挑戦してみて欲しいです。
3.鳶職人に女性が少ない(ほぼ居ない)理由と女性でもできる理由
僕が現役で鳶職人をしていた20年前くらい前までは、現場で女性を見かけることはほとんどありませんでしたが、最近では建設現場全体では女性の姿を多く見かけるようになりました。
それでもなお、99.9%以上が男性で占められているのが超男社会である鳶職人の世界です。
では、なぜ女性が少ない(ほぼ居ない)のか?
その原因と思われる点と、実はそれが女性には出来ない理由にはならないという事を説明していきたいと思います。
3.1 危険度が高い(と思われている)
鳶職の危険度が高いことについてはその仕事の性質上、ある程度は皆さんが思う通りの部分があります。
何もないところから建物の骨組みである鉄骨を建てたり、他職種の方たちが安全に作業ができるように足場をかけたり、安全設備(手すりやネットなど)を整備するなど、危険な状態を安全な状態にするのが鳶職人の仕事である以上、他職種に比べて危険度が高いことは否めない事実です。
ただし、建設現場の安全対策は昔とは比べ物にならず、新たな工法や資材等も開発され日々進化をしています。
それでも事故をゼロにすることができない大きな理由は、仕事をする各個人の不安全行動を減らすのが難しいからです。
鳶職人の事故の90%以上は本人の不注意(安全帯を使っていなかった、決められた手順を守らなかったなど)に起因するものだと言われています。
この辺りは車がどれだけ進化しても、交通事故を無くせない構図とよく似ています。
女性の場合『ルールをしっかり守る』『慎重で用心深い』など男性より相対的に安全意識が高いという印象を受けることが多いので、この点においては女性だからというハンデにはならないと思います。
3.2 体力がないと無理(と思われている)
体力的なものについては、特に我々のような鳶職(大型工事を中心に鉄骨も足場も含め鳶仕事を全般行う)については、そもそも扱うものが大きすぎるため、皆さんが思う以上に機械化されているので、純粋な力?(重いものを持ち上げられる的な)はあるに越したことは無いですが、皆さんが思うほど必須な能力ではありません。
また、鳶仕事の中にも『力が必要な仕事』と『そうでない仕事』があるので分業することも可能です。
またこの仕事の特徴として、仕事を覚えるにつれ力仕事の比率は下がっていくので、体力的に辛いのは慣れるまでであり、それは男性であっても変わりません。
弊社に在籍している(いたも含め)女性鳶職人達も女子プロレスラーや女子ボディービルダーのようなマッチョな人は1人もいなくて、みなどちらかというと華奢な部類に入る人たちばかりです。
体力的なハンデは慣れと知恵と機械を活用する事で乗り越えらるというのが僕の考えです。
3.3 気性が荒い人ばかりで無理(と思われている)
『鳶職人は気性が荒い人ばかり』というのも一般的によく持たれるイメージですが、これは完全に間違った世間のイメージです。
まぁ、完全には少し言い過ぎかもしれませんが、、、
確かに、他の職業と比べると比率的にはちょっとだけ元気な人が多いかもしれません(笑)
あの独特な作業着姿もあり誤解されがちですが、私服で会えば爽やかイケメンも多いですし、当たり前ですが鳶職人全員が不良上がりなはずもなく、普通に穏やかな性格の人も多いです。
昔に比べれば良くも悪くも普通の人が鳶職人になることが多く、時代とともに明らかに変わってきています。
『初めはみんな怖そうに思えたけど、一緒に働いてみると優しくて面倒見の良い先輩ばかりです』という女性の感想をよく聞きます。
4.女性が鳶職をやる場合の会社の選び方3選
ここまで書いてきた通り、女性であっても鳶職人として第一線で活躍することは可能ですが、男性以上に働く会社は慎重に選ぶ必要があると思いますので、以下会社を選ぶ時に気をつけてほしい点を3つ書いてみます。
4.1 先輩女性社員がいる会社
まず1つ目は『先輩女性鳶職人が居るか』という点です。
女性が鳶職として働く上で大変なことは沢山あると思いますが、やはり男性ではなかなか理解できない点もありアドバイスが難しいことも多いです。
そんな時、同性の先輩が身近に居てなんでも相談できる環境というのは仕事を続けていく上で大きなプラスになります。
また一緒に働く男性鳶職人たちが過去に女性鳶職人と働いた経験があるか否かも大事な点で、あるとないでは仕事の教え方や指示の仕方など少なからず差が出ると思います。
女性が鳶職人になる場合は先輩女性鳶職人が居る会社を選ぶのは大事なポイントです。
4.2 社内制度が充実している会社
残念ながら鳶工事会社の福利厚生などの制度は他業界に比べまだまだ劣っている部分が多いです。
流石に社会保険などは加入している会社が増えてきましたが、ほとんどの会社で日給月給制をとっていることもあり、有給休暇の制度などは無いか、あっても事実上形骸化している会社が多いです。
また休みも日曜日のみで休日数も他業界に比べ少ないです。
特に社員数の少ない会社では1人が休むだけで他の職人への負担が大きくなるので、簡単には休み辛い職場環境になりがちです。
それ以外にも、育児休暇や各種手当てなどの社内制度が追いついていない会社も多いので、入社の際にはその辺りもよく確認して会社を選んでほしいです。
4.3 元請が大手の会社
社内制度については経営者の決断次第で変えていくことが出来ますが、日々働く現場の環境についてはその現場を受注している元請会社の方針に大きく左右され、自分達では改善が及ばない部分も大きいです。
弊社の元請であるスーパーゼネコンなどでは女性の現場受け入れに積極的で、各現場には必ず女性専用の施設(トイレや更衣室やシャワールームなど)が設置されますが、町場の小さな元請の現場ではまだまだ設備など見劣る部分も多いように聞きます。
なので、自分が入社を考えている会社の元請がどのような会社なのかも確認しておきたい点です。
5.経営者目線で考える女性鳶職人
最後の章では過去に5名の女性鳶職人が在籍している鳶工事会社の経営者である僕から見た『女性鳶職人について思うこと』を書きたいと思います。
5.1 注目を集める存在になれます
前章で書いた通り一般的に持たれているイメージとは少し違い、時代の変化とともに女性が活躍することも十分可能になりつつあるのが鳶職人の世界です。
- 体を動かすことが好き
- 職人的な働き方が好き(コツコツ技術を身につける)
- 男性と仕事をする方が気楽で良い
などと思える人にとってはかなり良い職場かもしれません。
給与面でも男性鳶職人との差はなく、同様に若いうちから稼げます。
建設現場では誰からも一目置かれる、ある意味現場の主役的な立ち位置の鳶職人ですが、さらにそれが女性で、男達に混じってバリバリと仕事をしていたらメチャクチャ目立ちますし、とんでもなくかっこよく注目の的になると思います。
多分まだ日本中を探してもそんなレベル(男性と互角に仕事をしている)の女性鳶職人は誕生していないと思うので、あなたが第1号になれるチャンスがあります!
今決断をして日々研鑽を積めば、数年後には『日本一の女性鳶職人』の称号はあなたのものです。
5.2 僕の夢『鉄骨建て方をバリバリとやる女性鳶職人』
これは完全に僕の個人的な夢なのですが、鳶職人の中でも花形である鉄骨建て方を男性鳶職人に混じってできる女性鳶職人をうちの会社から誕生させたいです!
高さ200mを超える超高層ビルの鉄骨を取り付ける女性鳶職人。
考えただけでワクワクしてきます。
それなりのセンスと弛まぬ努力と数年間の下積みが必要でしょうが(これは男性であっても同じです)女性にも必ず出来ると信じています。
この夢、誰か一緒にかなえませんか??
5.3 女性鳶職人が活躍出来る会社の特徴
弊社は東京のど真ん中でかなり大きな工事をやらせていただくことも多く、多くの鳶工事会社を知っていますが女性が在籍している会社はほとんど見たことがありません。
まして過去に5人も在籍となるとおそらく日本で唯一の会社なのではと自負しています。
うちの男性職人達は女性と働いた経験も多く、過去の失敗(言葉遣いや適正配置など)から多くのものを学んでいて、女性が働きやすい環境や制度にするよう会社全体で日々改善をしています。
弊社の取引先は日本トップクラスのスーパーゼネコンですので、各現場も女性を受け入れることに適した環境ができていることが多いです(町場の小さな現場では女性用設備の整備などは遅れているところも多いのが実情です)
また3章で書いた通り女性鳶職人の先輩がいる環境で働けるという点でも大きなアドバンテージがあると思っています。
女性で鳶職人として働くことに興味関心のある方はお気軽に相談いただきたいです。
まずは女性が現場で働いている姿を見学する所から始めてみてはいかがでしょうか?
さいごに
さいごに
- 引き締まった身体を手に入れるためにスポーツジムにお金を払う。
- 綺麗な夜景や景色をみるため展望台に登るのにお金を払う。
- スリルを味わうためにアクティビティにお金を払う。
鳶職人になるとお金をもらいながらこれら全てを味わえます。
なんて魅力的な仕事なのでしょう(笑)
男性だけに独占させておくのはもったいないです。
鳶工事会社経営者として、一流の女性鳶職人が1人でも増えることを心から願っています。
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